SDGsの旅 Vol.2 北海道ニセコ町

2018年9月4日(火)、函館駅10:48発スーパー北斗9号は、車両整備の影響で入線が大幅に遅れていました。列車を待つ間に、四国や近畿地方を中心に記録的な高潮と暴風を記録し大きな被害を与えている台風21号の北海道への影響を心配していました。この時、9月6日(木)3:07に発生した北海道胆振東部地震が迫っていると思うことはありませんでした。地震により、被災されたみなさまには心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

私は、函館に宿泊した朝、必ず朝市を覗くことにしていますが、いつも新鮮で色鮮やかな海鮮丼や水産加工品と元気なお店の方が、私たち観光客をもてなしてくれます。

スーパー北斗9号は、函館を発車すると五稜郭・新函館北斗・大沼公園・森・八雲・長万部の順に各駅に停車、以降、洞爺・伊達紋別・東室蘭に停車し終着の札幌に向けて運行しています。東京に向かう東北新幹線は、“終点”東京とアナウンスしますが北海道に向かう新幹線や北海道内の列車では“終着”とアナンウンスするのはどうしてなのでしょうか?

10分遅れで発車した列車の自由席は、新函館北斗駅で満席になりました。乗客のおよそ2割は、リュックサックを背負った外国人観光客で、大沼公園駅で列車を降りました。その後、自由席にも空席が目立ち、数分後には進行方向右手に駒ヶ岳と壮大な農風景を眺めることができあらためて広大な土地の北海道にいることを実感しました。

列車は森駅付近から海岸線を走行しましたが、静かな噴火湾の景色に一抹の不安を感じたことは事実でした。

函館本線と室蘭本線が分岐する長万部駅には定刻12:20頃に到着しました。この旅の目的の一つに長万部名物「かにめし」に舌鼓を打つことを決めていました。海の豊かさと店主の愛情を敷き詰めた「かにめし」は、およそ1時間の待ち時間を楽しませてくれました。私の「SDGsの旅」では、必ずグルメレポートが書かれることにご了解願います。

長万部駅からは、北海道の大自然の中をおよそ1時間半走る気動車の旅です。車窓から見えた雲が、接近している台風21号の状況と今夜以降、台風への適応に迫られる自身のBCP(事業継続計画)に強い緊張感を感じました。

SDGsの旅の目的地、国際リゾート都市『ニセコ町』(平成30年度「SDGs未来都市」)には、予定の14:40頃に到着しました。

ニセコ駅に立て掛けられたTourist Informationには、「Welcome to NISEKO」と書かれており、国際リゾート都市のおもてなしの姿勢を感じました。外国人旅行客の誘致は最近、インバウンドや地方創生の観点から行政と民間の協働で行われています。自治体の職員や議員の方は是非、ニセコ町に足を運び見聞を広めてみては如何でしょうか。

ニセコ町は、「SDGs未来都市」に選ばれる前から「環境未来都市」に選出されています。ここで環境に関する二つの取組事例を紹介します。雪が積もるという地域性もあるかもしれませんが、底上げされた綺麗な「ごみステーション」を見るのは初めてでした。その取組に関しても、「燃やすごみ」と「生ごみ」を別に回収することになっており、ごみ処理場での環境負荷低減につながることを連想しました。通常、ごみステーションは負のイメージがあり少し離れた場所に設置されていますが、ニセコ町の本通ではテラスとごみステーションが共存しています。もう一つの取組は、環境と関連しているのかはわかりませんが、町内に「ニセコ綺麗カード会」が設立されており、何らかの地域通貨が使われ地域経済の好循環に貢献していると思われます。


私はニセコ町役場を15:00頃に訪問させていただきました。以前、東京で働いていた時に何度か地方創生SDGsセミナーで、ニセコ町長のSDGsに関する熱い想いをお聞かせいただく機会があり、一度同町を訪問しSDGs未来都市の取組を肌で感じたいと思っていました。同町の職員様の「SDGsの推進は、町民への徹底した情報公開が大切」とのお話がとても印象に残っています。お忙しい中ご対応いただき、台風の接近についても教えていただき本当に感謝しています。

町役場前から宿泊先に移動するタクシーの中で、運転手さんに「ニセコ町内から新函館北斗駅」までのタクシー料金を聞いてみました。運転手さんは無線で営業所に問い合わせ、およそ4万円弱と教えてくださりました。明日の朝、鉄道が止まることは当時の空模様からも容易に想像することができました。

宿泊先にチェックインし、スキー場につながる道を少し散策してみました。まだ雨は降っていませんでしたが雲行きが怪しかったことを記憶しています。そんな中で道路にいた一匹の昆虫(バッタ)と温泉が、私の心を癒してくれました。

その日の夜、ニセコ町役場のホームページには、緊急・災害情報として「9月5日、町内各学校は臨時休校します」と情報が公開されておりました。

9月5日(水)朝、SNSの鉄道運行情報から道内の鉄道全線が運休となっていることを知りました。SNSには全日運休と運行を匂わせる双方の情報が書かれており困惑しましたが、私はタクシーで新函館北斗駅まで移動する心づもりでチェックアウトの手続きをしました。けれども、ラウンジで外のスキー場の風景を観ながらチェックアウトの10:00を待っている間に、レンタカーで新函館北斗駅まで移動することを考え、ホテルのフロントの方のご協力で何とか1台の軽自動車を探していただきました。レンタカーは正午以降に引き渡し可能とのことで、ホテルの方に車で30分ほど離れたレンタカー会社まで送っていただきました。車中では、ニセコ町の観光、酪農、農業、国内外の労働者の働き方までお伺いすることができ、今後の地方創生を考えるうえでのヒントをいただくことができました。何から何までお世話になってしまい、もう一度、お礼にお伺いしたいと考えておりますが、まだ実現しておりません。

正午過ぎ、台風21号の通過後ではありましたが、まだ残る台風の雨風に運転する車のハンドルが左右にブレました。休憩・食事をとりながら、およそ140km(一般道を約45km、道央道「黒松内JC」-「大沼公園IC」:94km)、約4時間の移動でした。途中、「道の駅ニセコビュープラザ」隣接の食堂で、ルチンたっぷり!「韃靼蕎麦(だったんそば)を食べました。韃靼蕎麦はルチンが通常のそば粉の約150倍で毛細血管の強化・脳卒中・高血圧・高脂血症・糖尿病の予防に非常に効果的!との広告に食べずにはいられませんでした。味にも大変満足しました。

その後2時間ほど運転し、道央道「八雲PA」では、美しい虹のアーチを写真におさめ、レンタカーは15:40に新函館北斗駅に到着しました。私は、何より無事に移動できたことと、ニセコ町の皆様の優しさに感謝をしたい気持ちでいっぱいでした。

新函館北斗駅16:17発の「はやぶさ34号」に乗車し、新青森駅に17:20到着し、青森市内で就寝中の9月6日(木)に大きな揺れを感じました。北海道で初めて震度7を観測した「平成30年北海道胆振東部地震」でした。八雲町で観た美しい虹のアーチとは裏腹に、出張中に体験した台風と地震という自然災害の連鎖に適応できるBCPとレジリエントな社会づくりの必要性を痛感したSDGsの旅でした。

最後に繰り返しになりますが、被災されたみなさまの一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

2018年初秋
今田裕美

H.KONTA • 2019年4月9日


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